《MUMEI》

取り敢えず眠らないことにしたヴァンは、愛用の手奴(銃火器のこと)と剣を持って向かいの部屋に行った。

その部屋は主に武器の整備等に使われる部屋だ。危険物が沢山有る為、当然ルキアは立ち入り禁止。

ヴァンは手奴と剣の手入れをざっとすると(就寝前にしてはいる)、訓練用の手奴と木剣に持ち替えて今度は建物の外に出て行った。

ヴァンは傭兵でありながら拠点を持ち、自らを売り込むのではなく依頼が来るのを待つという珍しい傭兵だ。

理由はとても単純。

放っておいても大量の依頼が舞い込んで来るからだ。それ程までに彼は優秀な傭兵なのだ。

『聖者ヴァン』

この名を知らぬ者などフォースにはそういないだろう。

どこまでも無慈悲に破壊と殺戮を行うことへの皮肉と、彼が標的を殺す時に『Pray(祈れ)』と言うことから付けられたこの二つ名を、彼自身は甚く気に入っている。

武器に十字架の装飾をあしらったり、十字架をモチーフにしたシンボルマークをデザインしたり。

兎に角彼は『聖者』という強烈な皮肉を受け入れ、楽しんでいるのだ。

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