《MUMEI》

「ぁ、そろそろ‥」

「お出かけになられますか?」

「──はい」

「では、どうぞ」

椅子を引いてくれてから、タクトさんは私に手を差し延べてきた。

その手を取って、私は玄関に向かった。

ゆっくりと、扉が開かれる。

「──では、お気を付けて行ってらっしゃいませ。お帰りをお待ちしております」

「はい、行って来ます」

ポッカリ穴が空いたようになっていたのが、今は満たされている気がする。

──彼のお陰ね。

「───────」

さぁて、明日からまた頑張りますか。

捜していたものが、見つかった事だし──。

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