《MUMEI》

…呼吸が…


なんだか、心が痛い…




隆志の笑顔が


辛い



…辛い






「寒くなってきたからさ、鍋いーかなって、ほら水炊きなら俺でもなんとかなるし?」






野菜や魚介類が昆布と一緒に鍋に入っていて、隆志は俺の前にある器にポン酢を注いでくれた。




「…な、隆志」



「ん?」




「昆布は水からダシ取りしてさ、沸騰する前に引き上げるんだ…」



「そうなんだ?でもあんまりかわんねーだろ?でも一応引き上げとくか?」




隆志はさい箸で長い昆布を引き上げて鍋の蓋に乗せた。




その昆布は煮すぎた様でブツブツとデキモノが出来たみたいに肌を悪くしていた。






「あ〜、我ながら美味い!」



隆志はビールを飲みながら食べだした。




俺も恐る恐る箸をつけだす。



「…………」





「な?なかなかだろ?つかたまには和食もいーだろ、惇はダシ系の和食つくんねーからさ、これからは俺が和食担当しようかな」


苛々する




無性に




苛々する






「……違う」




「え?」






ガシャンッ!!




「違うッ!!!」






俺は勢いよく立ち上がる。


「惇?」





「………ごめん、



俺…だめだ………」




「惇!!!」



俺はやみくもにマンションを飛び出した。






息が苦しい!





外で!



隆志の居ないところの酸素を



補給した…い…



……








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