貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
人形。
時々フラッと出かけるアキ。
帰宅したその手には、いつもわたしへのおみやげが下がって居る。

少しだけ、複雑な気持ちになる。
なんか、『飼われてる』ような。


好きなものを好きなだけ与えられて過ごすのは、最高に贅沢な暮らしだと思う。

けど、このままでいいのかな?



「ほら、これがこないだあんたが欲しがってたキャスケット」

ファッション雑誌の帽子の特集を食い入る様に見てたのを覚えて居てくれたらしい。

それをポンとわたしの頭に乗せるアキ。

「…あ、ありがとう。えと、これいくらだっけ?」

「お金出そうとしてる?」

「うん」

「おみやげなんだからいらないってば。そんな心配しないでよ」

「でも…」


「ね、黙って受け取るのも『友達』でしょ?」


いつもこう諭されて終わり。


『友達』って言葉を出されると何も云えなくなる。




価値観の違いはなかなか埋まるものじゃない。


だからここはわたしが折れるべきなんだ、と割り切るしかないのかな。



モノで溢れた部屋の隅で、そんなことを思った。

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