《MUMEI》
 考える男
 
 まさにギリシャ彫刻だ 
…宏介はあの有名なロダンの(考えるヒト)…を緑深いこの森の石上まで運んできたのでは……と錯覚を見たような気がした 

「どうだい…似てるだろ…  へへ……(笑) 」 
通称ビルが意地悪そうに(笑)った 

しかし…そのギリシャ彫刻のような美しく逞しい筋肉をした男は 先ほどからピクリとも…動かない… 

生きているのか……それとも…ただの銅像なのかも知れない… 

「あの男性は 生きているのかい ? だとしたら何故?…じっと動かずに考え込んでいるんだい ? 」 
宏介は 先程から必死で竿を操っている…ぼうぼうアタマのビルに聞いてみた  


「ん……? 生きてるか…だって?……んなコト知るかよ……ありゃ〜ああやってじっと考えるのが仕事みたいなもんだからな… 
…どうだい もっと近くへ言ってみるかい…面白い話しを聞かせてやるぜ…旦那さんょ…… (笑) 」 

また ビルが意地悪そうに(笑)っている 

宏介は少しカチンときたが…何か理由がありそうなのと興味とで…「あぁ!」と、 頷いて返事をした 。 

通称ビルはまだ少し湿り気のある長い髪と髭を振り乱しながら竿を漕ぎだした…… 

そして深緑色の流れに逆らいながら近くの土手までよってくると…… 竿を川底に突き刺して… ゴタゴタと揺れる小舟を…なんとか…くい停めた 。 

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