《MUMEI》

 研究施設の建物自体はそれほど大きくはなかったが その敷地面積の広さに二人は驚いた… 
その殆んどが雪に覆われた森なのに…… 何故…このような広大な土地が施設に必要なのか……栄一とユカには理解できなかった 


ロビーに入りカードチェックを済ましているとすぐに金髪を短めに刈ったスーツ姿の美しい女性が二人を待ち構えていた……

秘書なのだろうか…その綺麗な金髪の女性はこちらへ……と、中を案内してくれた…。 

二人はまず所長のバーンズ元へ連れて行かれた 


部屋へ入ると…誰か先客が来ている様子でドア越しに話し声が洩れ聞こえてくる… 

美人の秘書嬢が先に告げに行くと…中から 金髪を撫で付けたサングラスの男が二人には目もくれず即座に部屋から出ていった…

男は左手に黒い革手袋をはめ…通りすぎるときのその異様な雰囲気に…二人は不気味で不安な印象を感じた 。


しばらくするとバーンズが秘書と共に現れた 。

「やあ……二人ともよく来てくれた ……道中はたいへんだったろう !」 

バーンズは愛想よく迎えてくれた…… 
「博士は元気で頑張っておられるかな……折角だからゆっくりとくつろいで行ってくれ……」 
二人と握手を交わすとお決まりのような挨拶をまくしたてた 。 


栄一は先ほど出ていった男が少し気になっていたのでバーンズに問いかけてみた 

「ミスターバーンズ……先ほどの彼は………もう…お話しはいいのですか ?」 
不意に男の事を問われたバーンズの表情が確かに一瞬曇った…… 


「あぁ……パスカルの事ですか…… 彼もウチの社員ですよ……フランスのね…… 」 

栄一は怪訝そうな顔で…「 フランス?…… 」 


「 知っているかな…? 
ウチの関連会社の…… 
オスカー研究所を…… 
そこの社員で……ロシア系の……フランス人だったかな………話しはもう済んだからお気になさらずに…」 
そう言い終えるとバーンズは傍らの秘書嬢に博士の部屋のキーを渡した…… 

バーンズの表情は何故か硬くなっていった…… 

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