《MUMEI》

やっと落ち着いてきた、と思ったら──‥。

「ごっ‥ごめ‥」

私は、あろう事かグラスを倒して、おまけにそのグラスを床に落とした。

アキラ君は気にしなくていいって言ってくれたんだけど‥、やっぱり何ていうか‥ハズい。

何やってんだろ、あたしってば‥。

一生懸命、割れたグラスを片付けてくれてるアキラ君を、私は後ろめたい気持ちで見つめてた。

アキラ君は、破片を箒で集めながら──時々私の方を向いて笑いかけてくる。

それが、嬉しいようで、忝くて。

今度は、こんなヘマしないように気をつけなくちゃ‥。

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