《MUMEI》

 廊下は左手にゆっくりとカーブしながら進んでいった。

栄一とユカは秘書嬢のすらりと伸びた長い足に誘われるまま後ろをついてゆく… 


三叉路に分かれた廊下を左手に曲がるとき…右手側の奥のガラス張りの部屋に数人の白衣を着た男たちが中で動いているのが二人の目に止まった… 

栄一とユカは思わす立ち止まり覗いてみたが…振り向いた秘書嬢にすぐに催促されてしまった…… 

数人の男たちが銀色の至極頑丈そうな宇宙服に似たようなモノを取り囲んでいる姿が……一瞬ではあるが栄一とユカにはっきりと見えた 


博士のドアの鍵を回すとその美人秘書嬢は… 
「済んだら…ドアのロックをして またロビーに来てください…と、無表情に告げるとカチッカチッとヒールの音を高鳴らせて 来た方へ去っていた……栄一はにこやかに礼を言うとその見事な曲線を描いたミニスカートのモンローウォークを…男性にある本能のまま見送った……。 

「もう〜〜美人と見たらこれだから…… 鼻の下が伸びてるわよ ォ 」 
ユカはサッサと部屋に入っていった… 



「…?これ  かな…? 」 
栄一が手にしたモノは博士の言ったとおり棚の奥の本の間に…隠すように置かれていた… 

「田ノ倉さん……ソレ…なんなの? ひょっとして…あの…石に関係ある……」 

栄一が手にしたモノは、ほんとに小さな木の箱で…蓋を開けるとただティッシュペーパーが丸めてあるだけだった… 

栄一は慎重にそのティッシュペーパーを開いてゆく…
…中から出てきたソレはゴミと見間違うほどの………小さな石の欠片だった 。


田ノ倉は何か閃いたような風で… 

「ユカちゃん さっきの部屋で見たろ…あの宇宙服のようなモノ…… 」 

栄一はこのゴミのような欠片を木箱に戻すと自分の上着の中に入れ慎重にジッパーを閉じた…。 


廊下を戻ると…二人はまたあの三叉路にやってきた… 

「ちょっと……覗いてやろうか……… 」 

栄一はユカに…ウィンクして小声で囁いた 。

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