《MUMEI》

──ビックリした。

まさか、これを渡されるなんて思わなかったし──。

「───────」

いけない‥もう行かなくちゃ。

「お出かけになられますか?」

「ぅ‥うん」

何だか、返事がぎこちない──‥。

左手が、重く感じる。

シャンデリアの光を反射して──石が、チカッと光った。

「──玄関までお連れ致します」

「ぁ‥、うん」

私の手を引く、少し小さな手。

「如何なされました?」

「──ううん、楽しかったなぁって」

「何よりでございます」

アキラ君はニッコリしながら、扉を開けた。
「それでは、お気をつけて行ってらっしゃいませ。──お帰りをお待ちしております」

「はい、行って来ます♪」

──左手の、薬指。

今そこには、小さな碧い石がはめ込まれた指輪が──微かに煌めいてる。

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