《MUMEI》

***

「アキラ」

「ぁ‥、はい」

「何か良い事でもあったのか」

「──はい、ずっとお渡ししたかった物をお受け取り頂けたので」

「そうか」

「はい。──ぁ、そういえばシグレさん‥大丈夫なんですか?」

「何がだ‥?」

「まだ本調子じゃないみたいですが‥」

「この程度の事で、お嬢様にご迷惑は掛けられない」

「あまり無理はしないで下さいね?」

「──気遣いは無用だ」

シグレさんは、僕の脇を擦り抜けて行ってしまった。

ああ言ったのは、お嬢様の幸せを願ってるから。

だから、頑張ってるんだ。

僕も、見習わなくては──。

***

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