《MUMEI》

淡々と点呼が取られた。
僕も、その前も前も……ちゃんと声が聞こえたのに、どうしても聞こえない声があった。
エレナ曹長の四度目の呼び掛けにも応えない。




『ぎいあああああぁぁぁ』

人とも獣ともつかぬような慟哭。
イツバが、壊れた。

最初に撃ったのはバルナロ曹長で、無言でイツバの頭を貫いた。
……惨劇だ。


『生存者に、今から内線のみで対応する音を流す。
それを聴けば神経を侵されない。
奴らは音源に隠れているはずだ……クロバは搭載した光彩銃を指定の位置に同時発射し、爆風に紛れ第七小隊は核に潜入し奴らを破壊しろ。』

僕等の班が選ばれたのは何かの間違いだと思った。
エレナ曹長率いる僕等第七小隊は他の班より平均年齢が低く、イツバの試運転でさえ危うい。


『リョウカイしました、ワタシにツヅけ!』

エレナ曹長の明瞭な返事だけがよく聞こえた。
6人編成の小隊で僕等は5人生き残れた、他の班は2〜4人程度しかいない。
狂ったイツバは精鋭ばかりで、僕等は戸惑いを隠せなかった。

もしかしたら、神経により癒着しているイツバ適合者が、取り込まれやすいのかもしれない。
そう考えれば劣っている僕等の班が選ばれたことにも多少は納得出来る。

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