《MUMEI》

 研究室の中には白衣を着込んだ科学者らしき姿の複数の男たちがいた… 

 その殆んどがさっきチラリと見かけた銀色をしたメタルな宇宙服らしきモノの周りに集まって
しきりに相談を繰り返しながら作業をしている…

二人はできるだけ低い姿勢で壁に身を隠したまま片方の目でその様子をしばらく伺っていた…

栄一とユカは共に自分たちがまるで忍者かスパイにでもなったようなそのスリル感で…
今にも心臓が飛び出してくるのではないか…と、感じるくらいに緊張していたが… 
次第に…ユカの方が怖くなってきたのか…さっきから栄一の上着をしきりにひっぱっている 
「ねぇ……もう 帰ろ…見つかるとヤバイわよ……」 
ユカは頭を低くして見るのをやめ蹲っていた 

「ああ……  」 
栄一もその隠れ見している光景が、なにやら不気味な…見てはならないモノのような気がして…早くここから立ち去りたくなっていった…… 
二人は帰ろうとそっと中腰で向きを変えた……が、その瞬間……… 研究室にいた一人の男に姿を見られてしまった ! 
中にいた数人の男たちが顔を見合せながらこちらに近づいてくる… 

「! 逃げろ!  」 

栄一がユカに叫んだ!

二人はなりふり構わずに走りだした…… 

こんな時あらゆる動物の本能は……敵とは反対の方向へ逃げていくものだ……
二人も例外なく…彼らが出て来そうなドアの反対方向へと……逃げていってしまった… 
さっき通ったばかりの博士の部屋の前を通りすぎると… 廊下の奥へ……また奥へと…… 

栄一とユカは何かに取り付かれたかのように…
必死に駆け抜けていった…           

奥伝いの廊下は次第に細く暗くなり いつまでも…続いていた…

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫