《MUMEI》

…考えるヒト…幹 健児…… 
 
 「 ! 確かに…聞いた事のある名前だ… 」 
…その彼が何故こんなところに…? 

宏介は…哀れんだ表情でその幹 健児を見つめている…通称…否…今では愛称になってしまったビルを…見た 


「真面目なんだよ…生真面目過ぎたんだよ…奴は…… なぁ〜ヘラクレス 健児さんよォ  」 
ビルは 座ったままぴくりとも動かない幹 健児に…そう言ってコトバを 投げた… 

「まぁ……座れや……ォ 」
舟に腰を下ろしたビルさんは…不思議そうに見つめている宏介の方に手を向けて下に振ったォ 

「そこに座ったままの幹さんは生まれながらに恵まれててよ…そう…あの筋肉の身体も… 才能にもな……もちろん本人の努力もあったろうが、ずっとエリートでやってきて何せ二回もオリンピックに出れたんだからなォ…そのうちの一回は金メダルまで取ってよ…
やっぱり運にも恵まれてたわけだな……

ソレも…途中まではなぁ…  」 

「途中まで…?  」 
宏介はじっと座ったまま聞いていたがビル…さんの途中まで…が気になった 

通称ビルは…続けた… 

「だってよ…今、奴はこうしてここにいるんだろ…… まだじいさんでもないのによォ  まぁ考えてみりゃあよ…オリンピックが奴の幸せの絶頂期だったんだな… 」 

通称ビルはそう言うと…
ホウキのようなあご髭を掻きながら… 

「あれがいけなかったんだなォ  アレが…… 」 
と、言うと…あご髭をしきりに掻いている…虫でもいるのだろうか………

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