《MUMEI》

あたし、今日初めてここに来たんだし‥常連でも何でもないのに──。

「シグレさんって──」

「私はお嬢様の執事、それだけでございます」

「ぇ‥」

あたしの執事──ですか‥?

「左様でございます」

「あたしの‥」

執事──。

くすぐったいけど、やっぱり嬉しいです。

シグレさんの『お嬢様』でいられる事が──。

だから少しだけ、お言葉に甘える事にしましょうか。

少しの間だけ──。

「シグレさん、あの」

「はい、お嬢様」

「えっと、ありがとうございます」

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