貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
小さく伸びをする。
食材の買い物以外に久し振りに外出した。

弟に会いに。


母が「様子を見に行け」と送り出したらしく、待ち合わせ場所で落ち合った時、ダルそうにしていた制服の弟。


「姉貴もやるよなぁ。まさか家出するとは思わなかったし」

ほんの3ヶ月前まで、わたしのことを"姉ちゃん"って呼んでたのに、急に大人ぶった呼び方に変わるものなんだ…。


「まぁ、見る限り元気そうだね。母さんに嘘つく必要もなさそうだわ」

「うん、すごい元気。あの家に居た時よりも元気かも」

「はは…。一字一句ありのまま伝えとくわ」


ケラケラ笑い合う姉弟。
今までこんなに長く喋ったことすら無かったかも知れない。



「姉貴と一緒に住んでる人って、どんな人?」

「…不思議な人、かなぁ」

「何それ?訳分かんねー」


そうなんだよ、とわたしは返した。


なかなか掴めない"アキ"と云う人物。
いつもとは違う刺激を与えてくれた人。

わたしに勇気を教えてくれた人。




「…じゃあな、姉貴」

「うん。受験、頑張るのよ」

「オレは姉貴みたいなヘマはしねーよっ」


笑いながら捨て台詞を残して離れて行く弟の背中を、見えなくなるまでずっと目で追って居た。



わたしがダメだった今、当然の様に父と母の期待は弟に向けられて居るんだ。

わたしみたいに内に溜め込むタイプじゃないから、要領良く上手くかわしてるんだろうけど。




そんなことを考えてたら、急にアキが恋しくなって、わたしはダッシュでマンションへと向かった。

前へ |次へ

作品目次へ
無銘の作品を探す
無銘文庫TOPへ