《MUMEI》

「じゃあ‥ちょっとだけいいですか‥?」

あたしはフォークを置いて、シグレさんの方を向きました。

黒真珠みたいな瞳が、ジッとあたしを見つめています‥。

「えっと、あたし──よくドジっちゃうんです。友達とかといても、何か迷惑かけちゃったりして──」

「迷惑‥?」

「ハイ‥」

「ご友人は、本当にそれを迷惑だと思ってらっしゃるのでしょうか」

「?」

「お嬢様は、何も不安に思われる必要はございません」

「ほんとに──そう思いますか‥?」

「はい」

「そっか──」

何だか、そう思えてきた。

「──ありがとうございました、聞いてくれて」

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