《MUMEI》

「こんな何も得られる物のないプロジェクトはいらないだろ」
「だよなー。俺らも入院中ずっとそう思ってたんだよ。退院したら絶対あいつら殺してやろうってさ。でも俺らがやる前におまえがやっちまっててさ」
ケンイチが「なあ?」と織田の顔を見た。
「ああ。まあ、俺たちも二人で動こうと思ったんだが、最近奴らの警備が厳しくてな。なかなか手が出せない」
「で、目的が一緒ならお前も加えて動いた方が確実なんじゃないかって織田が言うから探してたんだよ。まあ、俺はどっちでもいいんだけどな」
ケンイチが織田の言葉を引き継いで言った。
ユウゴは二人を見つめ、「あんたらが使える奴らなら組んでやってもいいぜ」と低く言う。
その言葉を聞いてケンイチが嘲るように笑い出した。
「おまえな、今の状態わかってんの?」
「何がだよ」
「俺たちが通報すればいつでもおまえを引き渡すことができるってことだよ」
「その前に俺がお前を殺せばいい」
「できると思ってんのかよ」
ケンイチの顔から笑みが消え、まるで別人のような鋭い目がユウゴに向けられている。
その豹変ぶりに多少の驚きを感じながら、ユウゴはケンイチを睨み返した。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫