《MUMEI》

***

「──ぁ、起きたね兄さん」

「‥セイヤか」

「アキラ君が連れて来てくれたんだよ」

「アキラが‥?」

「兄さん、熱あるのに無理したりするから──」

「‥私は寝て居たのか」

「お嬢様がお出掛けになられた途端、壁に凭れてそのまま──」

「‥‥‥‥‥‥‥」

どうやら私は──あの後意識を無くしたらしい。

「今日はもう絶対安静にしてないと駄目だからね?」

「‥‥‥お前に心配されたくは無い」

「相変わらずだなぁ、兄さんは」

苦笑したセイヤに、私は溜め息をついた。

心配されるのは沢山だ。

私はただ、お嬢様の為にお尽くししたいのだ。

私の願いは、只──それだけ。

「ぁ、起きちゃ駄目だってば」

「アキラに礼を言いに行くだけだ。直ぐに戻る」

そう言って、私はキッチンの方へと向かった。

***

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