《MUMEI》

「何‥あれ」

大して興味がある訳じゃない。

でも、私の足は独りでに‥その建物へと近付こうとする。

何か、楽しい事が待っている──そんな気がして。

雪を踏み締める音が、やけに大きく聞こえる。

近付くにつれて‥金色の文字が目に飛び込んできた。

「‥ここ‥何の店‥?」

店っていうより、誰かの豪邸みたいな‥。

「──お帰りなさいませ、お嬢様」

澄んだ声が、した。

「‥ぇ」

‥知らない人。

「すいません、ここって──」

「お嬢様のお邸でございます」

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