《MUMEI》

 20分も全速力で駆けただろうか…… 二人の息はもう限界に達していた 。 

「はぁ〜もう  ダメ ォ!  」 
とうとうユカが崩れるように腰を曲げて立ち止まってしまった! 
栄一は大声で…「ユカォ…頑張れ!……」 と、励ましながら 腕を引っ張ろうとするが… 肩を大きく揺らし苦しそうに背中を曲げるユカは……もう動こうとはしなかった 。


その時………それまで青白く薄暗った狭い通路全体が、花を差したように黄色に照らし出された
 壁に埋め込まれた幾つもの赤い警報ランプが ウィ〜ンウィ〜ンと 唸り声をあげる… 

「ほらっ ユカ頑張れォ 」
栄一は すでに虫の息になったユカを必死に 抱き抱えて進もうとしていたが… 

「あっ…… !! 」 
突然…栄一が 今にも崖から突き落とされそうな 悲鳴をあげた ! 


灯りに照らし出された通路は後わずか数メートルで 行き止まりに…… なっていた ! 


走ってきた方を必死な形相で振り返る 栄一とユカ…… 
警報ランプの音が次第に近づいてくる…… 行き場を失った二人……冷たくなった汗が…身体中をたらたらと流れ落ちてゆく… 

焦る栄一に もう殆んどふらふらな足取り状態のユカが 振り返った先の壁を指差した……… 
「あれ!……見て!………」

その指先には非常口のような把手が見えていた…… 


運よく その非常口に鍵は掛かっていなかった…

明かりが灯ってから通路をよく見れば…まだ警報ランプの場所に幾つかの非常口らしき把手が見えている……

栄一とユカは急いでその頑丈な鉄の扉を開けると……中の螺旋階段を必死で駆け登って行った………   。 

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