《MUMEI》 バイオレンス二人目が来た。 「上等だよ」 今度は油断なく構えた。叫びながら殴りかかる。あきらは寸前で身を交わす。 少年は勢いあまって態勢を崩した。 慌てて振り向いたところへ右ハイキック! 「あああ!」 二人が目の前でやられ、残りの者たちに動揺が走った。 「空手かよ」 男は笑みを浮かべるとボクシングスタイル。 「シュシュ」 格好だけだ。あきらが素早くターン。バックパンチが顔面に炸裂。終わった。 あきらは残りの少年たちを睨んだ。 「しょっちゅう喧嘩してんのか?」 「だったらどうなんだ?」 「喧嘩は弱い奴がやるものだ」 「何!」 「本当に強い人間は喧嘩などしない」 「テメーはどうなんだよ!」 「喧嘩と格闘技は違う。喧嘩は暴力だ。頭の悪い奴ほど喧嘩が強いことを自慢するんだ」 一人が前に出た。 「俺は中途半端な気持ちで喧嘩はしてこなかった。そういう言い方は許さないぜ」 「そのおまえの考え方は、信念でも哲学でもない。ただのバカのたわごとだ」 「何だと!」 殴りかかる瞬間に左ミドルキック! 腹を抱えて膝をつく。 「ちっきしょう」 ふらつく足で立ち上がるが右ボディブロー! 前のめりにダウンした。 やられた少年も戦っていない者も、笑いでごまかすように、そそくさと駐輪場の入口に歩いた。 「俺も格闘技習おうかな」 あきらは鋭い目で睨んだ。 「喧嘩に使うならダメだ。ゴロツキになりたいのか?」 少年たちは苦笑を浮かべると、気まずそうに立ち去った。 愛梨が言った。 「映画やマンガがいけないのよ。喧嘩が強い男がカッコイイっていう間違ったメッセージを発信するから」 しかしあきらは冷たい目で聞いた。 「愛梨、何でパジャマなんだ?」 愛梨は照れ笑い。 「あ、いや、それはね」 あきらは愛梨の頭をはたいた。 「あ、暴力反対」 「いい加減にしろ愛梨」 「暴力で屈服させるの?」愛梨はふくれた。「ブログに書くよ」 「言葉の暴力で対抗するのか?」 「あれれ、あきらチャン言ってはならないこと言っちゃった?」 笑顔の愛梨の頭を、あきらはまた叩く真似をした。愛梨は大袈裟に頭を抱える。 「パジャマは挑発だ。変なことされても文句ないぞ」 「だから反省してるって。死ぬほど怖かったんだから、もう少しいたわってよ」 「甘ったれるな」 あきらが軽くボディブロー。愛梨もふざけてボクシングスタイル。 「あきらチャン、あたしに格闘技教えてよ」 「護身術か?」 「そう」 「素質ないな」 愛梨は一瞬硬直した。 「お礼に文章講座を個人授業してあげるから」 「いらねえ」 「あ、バカにした」 さっさと歩いて行くあきらの背中に、愛梨はパンチの連打。あきらが振り向くと逃げる。 あきらは首を振って呆れると、愛梨のアパートへ向かった。愛梨は再び背中にパンチ。 あきらが怒って追いかけると、愛梨は笑いながら逃げた。 END 前へ |
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