《MUMEI》 クッキーは、口に入れると‥さくっ、と軽い音がして、ほろほろと崩れた。 「───────」 砂糖の甘さと、ショウガの香り。 それと‥ハチミツの味‥? 「あの、これ‥」 「隠し味に──蜂蜜を少々」 「──ひょっとして‥ミカンの花のですか?」 「はい。お嬢様のお好みかと」 「──私の?」 「お嬢様は柑橘系がお好きなようですから──」 「ぇ‥、何で分かるの?」 私が訊き返すなり、セイヤさんは、ニッコリと笑った。 「──お嬢様の執事として、当然の事でございます」 前へ |次へ |
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