《MUMEI》








点滴を管理する電子音









聞き慣れた主治医の声






憔悴しきった隆志






俺に何か話かけた後病室を出て行く平山さん。







カーテンの隙間から僅かに陽が入っている……。



主治医と看護師が出て行く時、隆志は立ち上がり、折目正しく頭を下げた。










「さっきまで裕斗も居たんだ、……
寝ないでずっと…
惇に付き添ってた……」




「…………」



「………」



「…った…ぃ…」



「え?惇……」



「ゆ、ゆーとに会いたい、ゆうとおー…」





無性に会いたくて名前を呼べば涙が次々とこぼれ落ちる。




壊れたラジカセみたいに裕斗の名前を繰り返していたら





……ガラ…






「裕斗…」

と、隆志が静かに言った。






「やっぱマネに無理言って打ち合わせ延ばしてもらった、…惇が意識戻るまで…」



「戻ったよ」




「え?惇!!」


タタタと駆け寄る靴音。





「惇!……は〜……」

一瞬だけ目線があい、しかし裕斗は床に崩れ落ちた。


「……俺電話してくるから」



隆志はそう言うと俺に笑顔で、しかし寂しげに……




俺の頭に少し触れて、





そして病室を出て行った。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫