《MUMEI》
…誰?
「小河(おがわ)も頑張るよな」

「……小河?」


(誰だ?)


祐の言葉に、俺は首を傾げた。


今、俺と一緒にいるのは祐だけになっていた。


元々早く泳ぎたくて仕方なかった厳と頼は、俺に相手にされないとわかるとすぐに海に向かった。


それから、俺と祐で、俺と一緒にいたいという柊を説得し、柊と希先輩を海に送り出した。


そんなわけで、俺と祐は立ち止まり、未だに拓磨と話している志貴を見ていたのだが…


「小河って、誰だ?」

「えっ… 知らないのか?」


俺が頷くと


「ちょっと来い」

「な、何だよ」


祐は、俺を引っ張り歩き出した。


行き先は、海の家の


志貴と拓磨の前だった。


「どうしたの?」


志貴は、普通に首を傾げたが


(に、睨んでるよ)


志貴と二人の時間を邪魔された拓磨は、明らかに不機嫌だった。


「祐也、小河ってヤツ知らないんだよな?」

「う、うん」


(な、何だよ!)


俺の言葉に、拓磨は更に不機嫌になり、志貴も驚いた。


「祐也…小河は、拓磨の名字よ」

「え!?」

「お前、本当に知らなかったのか?」

「う、…うん」

「…そんなに俺はどうでもいいのか?」

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