《MUMEI》
▽
裕斗は椅子に座り、俺の点滴とは逆の手を両手で握ってきた。
真っすぐに俺を見下ろしてくるその顔……
「ほっぺ……どうしたの…?」
俺はいつも通りはなしたつもりが、やっと聞き取れるかどうかの声しか出なかった。
裕斗は緩く微笑み、
「気合い入れてもらった証だから、…気にすんな」
「…………」
「いーから、傍にいるから、ゆっくり休め?」
「………うん……
いなくならないで………」
ぎゅっときつく手を握られ、そのまま裕斗は少し立ち上がり…
カーテンの隙間からの光りが消え、そのかわりに
裕斗の唇が俺に重なってきた。
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