《MUMEI》 話せばわかる「ち、違う!」 拓磨の言葉を、俺は慌てて否定した。 (確かに、前はどうでも良かったけど…) 今は、違う。 俺は、拓磨を友達だと思っている。 (まぁ、友達の名字知らないって普通じゃないけどさ) それでも 言い訳にしかならないが、俺は拓磨の名字を知らない理由を口にした。 「だって、俺、一年の、自己紹介の時、トイレ行ってていなかったし!」 「あ〜、その時俺と雅樹と運命の出会いをしたんだよな」 「何それ!」 …話がそれるので、祐と志貴の発言は無視する事にした。 「それに、皆『拓磨』って呼ぶじゃん! 先生だって」 「『オガワ』が二人いるからな」 拓磨はあっさり理由を口にした。 (そ、そういえば) 拓磨の他に、名前で呼ばれている女生徒が、いたような… 「ちなみに、二人共小さいカワでオガワだけど、真由美(まゆみ)の名字は簡単な方の『川』で、拓磨はさんずいの方ね」 「真由美…」 (そういえば、そんな子、いたな) 「祐也、もしかして、名前覚えるの苦手?」 「もしかしたら、そうかも」 祐の言葉に、俺は曖昧に頷いた。 前へ |次へ |
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