《MUMEI》
祐の失言
「「さ、行こう」」

「お、俺は一人で後で入ります! 最後でいいです!」


風呂場に向かう廊下で、俺は激しく抵抗していた。


(いくら背中の事知られてるからって、何か…何か、嫌だ!)


「祐也、なら、あいつらと入るか?」


祐が言ったあいつらとは、俺達の次に入る


大志さん以外の男性陣だった。


(冗談じゃない)


「もっと嫌だ!」


俺の言葉に、柊が固まっていたが、無視した。


「田中君の為に、わざわざ男性陣二つに分けたんだよ」


(うっ…)


別荘の風呂はかなり広いらしく、女性陣は果穂さん以外は分けられていなかった。


言葉を失う俺に、祐が嬉しそうに口を開いた。


「さ!行こう、祐也!背中の刺青もちゃんと見たいし!!」


「…」


(今、こいつ、何て言った?)


その言葉は


予想以上に


別荘内に、響いた。


固まっている俺に近付いて、Tシャツとタンクトップを捲り上げたのは


頼、だった…


(しまった!)


そう思った時には、痛い位の視線が俺の背中に集中していた。


「は、なせ!」


俺の両手は、祐と大さんによって抑えられたままで、そう叫ぶしかなかった。

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