《MUMEI》

もう暗いし、心細くなってきたし‥取りあえずどこか、お店にでも入ろうと思って──明かりに誘われるように、私はある建物に近付いていた。

誰の豪邸か、って思う位、立派な建物。

ほんとにここ‥お店‥?

「──お帰りなさいませ」

「‥ぇ?」

顔を向けた先には、男の人。

それも‥かなり素敵な。

「さぁ、お嬢様──どうぞお入り下さいませ」

何故か、その言葉に違和感はなかった。

──白い扉が、静かに開く。

「‥‥‥‥‥‥‥」

初めて来る場所じゃない、そう感じた。

「お帰りなさいませ、お嬢様」

そう言った人達の中から、1人──男の子が進み出た。

この子も、初めて見る顔じゃない。

不思議と、みんな知っているような気がした。

この部屋の事も。

シャンデリア、テーブル、暖炉‥。

全部、知ってるような気がした。

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