《MUMEI》

「ナツメ君‥?」

白い、グランドピアノ。

それを弾いているのは、ナツメ君だった。

何年か振りに聞いた、バースデーソング。

「どうぞ、吹き消して下さい」

そう言われて、フッと息を吹き掛けた。

たちまち、真っ暗になる部屋。

次ね瞬間──パッ、と明かりが付いた。

「では、ケーキをお切り致しますね」

ナツメ君はケーキを一切れ、お皿に取り分けてくれた。

「──どうぞ、お召し上がり下さい」

苺の乗った、可愛いケーキ。

見つめる俯内に──ふと、昔の誕生日の事が浮かんできた。

今、その頃と同じ位楽しい──。

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