《MUMEI》

 アイスバーンを駆け抜けてゆく その男の運転は確かだった… 

後部座席に座る…栄一とユカは茫然と振り返りながら…その白い森の中にポッカリ空いた巨大な異空間を眺めていたが…
しばらくすると曲がりくねった道に入りすぐに見えなくなっていった 。 

カーブを過ぎた道路には…あの通行止めの柵がしてあったが どうやらギリギリ通り抜けた ……壊れていたところを見ると…先に、この運転している男が無理やり突入したようだ 


「ヘイ! 知ってるだろう……さっきの穴…… 」
サングラスの男がミラーを少し動かしながら 口を開いた…… 

「3年前の……  」 
栄一が思い出したように…手慣れたさばきでハンドルを操る、その男を見つめながら…答えた 

一瞬横顔を向けた…そのサングラスの頬がニヤリと微笑んだ… 

「 …俺の名前は…リード アメリカ人だ …しかし驚いたよ……銃声が聞こえてきたからね…… 
キミたちは……研究所のヒトかい……  」  

後部座席の把手を必死で握っていたユカがやっと身を乗り出した…… 

「あの………何処へ…行くんですか?……… 」 

ユカはまだ不安でいっぱいだった 


後ろで緊張しながらも…ぐったりと座り込んでいる二人を…アメリカ人だと言うそのリードは…気にもしない様な素振りで運転している……

「……おうちに 帰るんだろ?  」 

 リードは苦笑しながら…ちらりと ユカを見た… そして…… 

「中で…ナニを見たのかい ? ナニが…あった? …… 」 
と、興味ありそうに聞いてきた…

しばらくの間…車の中に沈黙が… 流れた 。


自己紹介はしなかった…

ただ…リードは…… 
二人がバーンズの部屋で すれ違い…不気味な不安を感じた 同じく深い緑色のサングラスつけた ロシア系フランス人だという 
あの パスカルをつけて来た……とだけ 言った 。

三人が乗った車は 謎と不安を引き連れて…白い疾風の中を 駆け抜けていった 。

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