《MUMEI》
ひとりでに
安西と、帰るのは久しぶり……。

今日は雨だから、傘をさして二人で途中まで歩く。俺はバスに乗るまででもない距離だから歩き、安西は俺が講習あるのを待っていてくれたから、バスを逃して歩き。


「先輩何処の大学行くんですか?」


「う゛、痛いとこつくね。実は国立狙いだからハードル上げすぎて今切羽詰まり気味。
なんで私立選ばなかったんだろ。滑り止めとかは考えたくなかったし……なんかレベルばっかり高くして自分の目標見失ってる。」

勉強が苦痛になりつつある俺。


「俺はてっきり、ウチ先輩と二人同じ大学かと思ってたんですけど違うんですね、ウチ先輩は私立らしいですもんね。」


「別に俺らだっていつも同じじゃないんだからね?」

今なんて全然知らない奴なんだから。


「あはは、二人全然違いますからねぇ。木下先輩ってなんか……うちのちび達みたいで……すいません。」

礼儀は正しいが今のはちょっと敬いが足りなかった。


「安西が兄貴気質なだけだよ。俺は普通だから!」

一般人です。


「ええ?」

安西が含みのある返しをしてくる。


「……ふつーだよ、ふつ…………あ。」

写真のことが頭を過ぎる。


「先輩、そうやって悩まないで下さい。そんな顔されたら放っておけ無い……」

安西の誠実さが染み入る。


「なにその殺し文句は、俺は先輩だぞ……ばーか!」

泣きそうになったから、顔から雨を浴びた。


「嬉しいくせに。」

嫌んなるくらいの余裕だな。


「違うだろ、安西が俺を好きなんだろ!」

目には目を歯には歯を冗談には冗談を。
緩んでいた安西の表情が引き締まる。










「はい、そうですよ。」

……んん?


「あはは……なんか、真面目に言うから告白みたいじゃないか。」

安西があんまり真剣なものだから、意識してしまった。


「木下先輩が好きです。」


「安西……」

あんまり真剣に見つめてくるものだから、誤解する。


「ごめんなさい、先輩を困らせていますね。……ああ……忘れ物してしまいました、学校戻りますね!」

俺を気遣いすぎだ。
でも、今は一人にしないで欲しい。


「……その忘れ物ってすごく大事?」

つい、肘を掴んで引き止めてしまった。


「……先輩は比較できません。」

そうか。
俺が、好きなのか……
真摯に話してくれているのに茶化してしまったじゃないか、おれのばか。

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