《MUMEI》
河童のお皿
 それにしてもきれいな月灯りだった… 
ブルー色の三日月からオレンジ色の半月へと大きく像(カタチ)の変わる月が円を描きながらフィルムのようにたくさん出ている…


進むにつれ小川の幅も横に広がり 
辺りにはまあるい岩がゴロゴロと増えてきて
勾配がきつくなってきているのか…渦を巻きながら流れが次第に早くなってきた… 


「 宦@とうちゃんの〜為な〜ら エ〜ンヤ こ〜ら〜宸ゥあちゃんの〜為な〜ら エ〜ンヤ こ〜ら〜と ォ」 

所々…川底から岩がはみ出てきた…

せっかちな髭ビルが…楽しそうに歌いながら… 川底に竿を差し込んでは…それらの岩をよけていた…


川向こうに支流が見えている 
どうやら小川はこの先…二つに分かれているらしかった 

突然…… またしても…小舟がぐらぐら〜と大きく揺れた


「ちぃ〜ォ また現れやがったなォ ! 」 

船頭気取りのビルは 竿を置くと…縄を手にした  

アタマに薄紅色のお皿を乗せた…あの河童の仕業だった!


 「えぃ ォ この野郎! ピシャッォ ピシャッ! …流れが早くなると 出てきゃあがる…… ピシャッォ ピシャッ! 」 

船頭ビルは 夢中になって…その浮き上がる 河童の皿めがけて縄をふるう… 
河童は…… ビルに叩かれる度に 嬉しそうに…「ケッケ〜〜」と、奇声をあげて喜んでいる…… 

宏介はこの二つの奇妙だが可笑しな絡み合いを、なんとか振り落とされないように…小舟に捉まって見ていた……
ところが あまりにその河童に…我を忘れて気を捉われすぎた船頭ビルの小舟は… 
突き出ていた岩に衝突して向きを換えてしまった 

「あれ〜〜しまったォ 支流の方へ流されてくぞ! 
これじゃあ〜元来た方だべォ…… 」 

もう……手遅れだった…

激流に…船頭のビルも宏介も…必死で小舟に捉まっている… 


小舟は……支流の方へと…流されてしまった……  

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