《MUMEI》
思わぬ伏兵嬉々として
深く深く、気絶という形で眠っていた2人。色で分けるなら、白と黒で空中に不思議なモノクロームを作り出している。

───そんな快楽とミスアが笑い声で目を覚ます。

2人は部類で言えば美人の部類であり、そんな2人が空中でぶら下がっているだけで空中では奇妙な空間が展開されているが───


その空間は唐突に破壊される。

黒を基調とした服を纏う魔姫の、空気を読まぬ、ある意味彼女らしいともとれる言葉で。

「だあれ?…五月蠅いよ?」

「…"喋らないで"」

瞬間、喜多の笑い声が止まる。それは喜多が自分から笑うことを止めたのではなく。

見えない力に無理矢理止められたように見える。

「…!…!?」

喜多が訳が分からないという顔をしながら言葉を出そうとするが、声は一向に出ない。

体が、脳が主人であるはずの喜多の命令を聞かない。

それは自身が息をしていないような錯覚を思わせる。奇妙な出来事だった。

半分パニックになりながらも喜多は持っていた銃を吊ってあるはずの2人へ向ける。

だが、2人は既におらず、あったのは切れたロープのみ。

「快楽、起きて。気絶なんかしてないでしょ?」

ミスアが優しく横になっている快楽を揺すると、場違いな返事が返ってくる。

「…う…ん…あとちょっとだけ…ねむ…らせ…。。。」

「いいから!"起きて"!」

言葉と同時に快楽の目が開かれる。その様子を喜多は黙って見続けていた。

───もっとも、声が出ないから喋ることも出来ないのだが。

そんな状況の中、自分達を見ている喜多にミスアは気づき、喋れない喜多の言いたいことを予測し、答えを紡ぐ。

「驚いたでしょ?それ、私の能力よ?言葉を実際に出来るの♪制限は特にない素敵な能力よ?」

喜多はふざけるなと言わんばかりに銃口をミスアに向ける。

だが、ミスアは冷徹に、顔には冷笑を浮かばせ、一言。

「"銃よ壊れろ"。」

それだけだったが、"それだけ"で充分だった。

それだけで銃は塵のように粉々になり、空気に溶けるように消えた。

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