《MUMEI》

『‥かーさん』

『ぁ、林檎──良かった、出て来てくれて』

『かーさん、おれ‥』

ごめん、って言おうとしたら。

『お腹空いたでしょ。ハンバーグ作ったからみんなで食べよ』

お袋は、オレの頭に手を置いて、ニッコリ笑ってそう言った。

オレはビックリした。

『いいの‥?』

『もっちろん。──ほら、手洗ってらっしゃい』

『──うんっ』

お袋は、全然怒らなかった。

オレがあんな事言って、部屋に閉じこもってたのに。

テーブルに着いてから、オレは気になって──お袋に訊いてみた。

『‥かーさん』

『?』

『なんでおこんないの?』

『林檎が悪くないからよ』

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