《MUMEI》 『そう。だから林檎は──その名前、大事にしなきゃね』 『‥‥‥‥‥‥‥』 林檎──‥。 何べんも、頭の中でそう繰り返した。 『‥母さん』 『ん?』 『リンゴ‥食いたい』 『──よしっ、じゃあちょっと待ってて』 お袋はすぐに、リンゴを持ってきてくれた。 『はいっ』 それを見て、オレはビックリした。 『‥兎‥?』 そのリンゴは、兎の形をしてた。 『───────』 『どう? 可愛いでしょ』 『何でこんな──』 『ほら、食べてみて』 『‥‥‥‥‥‥‥』 一口囓って‥何かいつものリンゴより甘い気がしたのは──たぶん気のせいじゃなかったと思う。 前へ |次へ |
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