《MUMEI》 それからだ。 オレが、兎のリンゴを好きになったのは。 でもだんだん、中学にもなってくると‥弁当に兎のリンゴって訳にもいかなくなってきた。 お袋は、よく‥ 『入れようか?』 って訊いてくれたけど‥オレは頷けなかった。 何か、プライドみたいなのが邪魔して。 ただでさえ、林檎って名前で浮いてんのに──兎のリンゴなんか持ってったらさらしもんになっちまう。 だから、 『いい』 って言い続けてた。 まぁ、今はミオの弁当からもらったりしてるけど──。 兎のリンゴなら、いくらでも食えるし。 20コでも30コでも。 それ位、好きだ。 ミオに比べたら、全然だけどな。 前へ |次へ |
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