《MUMEI》

「足の裏は元気?
人間が保菌してなかったら爛れた痕舐めてやりたいくらいだよ。」
俺の呼びかけにようやく、沖島は落ち着いて来たようだ。

「僕、愛する人に愛していると言われたかったんです。いつの間にか、貴方を見ているうちに頭に血が上って……」
沖島はあちこち縛られて身動き取れない俺に抱きついてきた。罪深い者が罪を告白していくように懇願してきた。
「こんな醜い嫉妬に潰れてしまうなら、僕、死にます。……貴方に看取って貰いたい。」

やっぱり、狂ってる。
こんな狂信者に誰が育てたんだろうか。
除菌したい、纏わり付いた汚れを落としたい。

此処は何処だろう。地下みたいだ。絶対汚い床だ。



手足が解放された。
「早く、死ぬなら死ねば。
そのナイフで喉元掻っ切りなよ。」
沖島に極力柔らかいトーンで促した。
しかしこっちも限界だ。早く汚れを取り除きたい。
「出来ないことを言うな。
アンタが俺を縛り付けてまでしたかった覚悟は、こんなものなの?」
沖島の顔を覗く。

無表情だ。空っぽ。

強く

押し倒された。


臭い液体を浴びせられる。
ナイフはライターに持ち替えられていた。




こんなにつまらない死に方なのか……
抵抗は、いいや。

黙って焼けて消えてしまえ。

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