《MUMEI》 ヒトとして生まれると言う事は…ある意味残酷なコトだ… この複雑 且つ多様化してしまった社会に於いて 平等…などと、言った美辞麗句は もはや死語になってしまった 。 貧しき子は貧しく生まれ… 富豪の子は富豪の子として育ち… 王の子は権力者の子としてその宿命を背負うのである そして… その運命そのモノが不条理である以上… 誰にも訪れるそのヒトの死が 不幸だった…などとは… 誰にも… わからないのである 。 激しく水しぶきをあげていた小川はまた濃紺の宇宙のように…静かに流れていった 右手側の遠くには…あの淡い緑色やピンク色したなだらかな丘が その色を交差させながら…また見えてきた… そう…あのクレーの丘だ… 宏介は…幼い頃の自分の夢を呼び覚ましてくれるような…その楽しい色の変化に しばし我を忘れて見入っていた… ポチャリと…小川が跳ねた… 濃紺の流れの中 銀や金の線を綴りながら不思議なカタチをした魚たちが…愉快な顔をして楽しそうに泳いでいる…が、あの河童の姿が見当たらなくなっていた 「…河童は何処にいったんだい? 」 宏介は 先ほどの格闘でグッタリと小舟にヘタリ込んでいる…通称船頭のビルに聞いた…… 「…あん ? 河童かい … 奴はひねくれモン だからよ〜 こっちが大変になると…出てきゃあがるんだよな ! ほっといたら……そのうち また浮かぶさ〜な 」 「…浮かぶ?… 」 宏介がまた聞きなおしたもんだからグッタリとヘタリ込んでいた船頭格闘家のビルは… その息を 吹き返してしまったォ 「しかしアンタも モノ好きだなぁ〜 そんなに河童のコトが気になるのかよ… はははぁ〜〜((笑)…まあ アイツもかわいそうな奴だからよ……生まれが…コレがまた貧しくてな…… 」 船頭ビルはまたしても 歯をむき出しにした…あのいやらしい(笑)い声をあげて 頼みもしないのに 勝手に…語り出した 。 前へ |次へ |
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