《MUMEI》
確信
「裕斗に聞きたい事あったんだ」
俺は惇のバッグの中から分厚い手帳を出した。
スケジュールや何やら全部びっちり書かれている、かなり使い古したそれを俺は開く。
「この中身見た事は?」
「…ねーよ、つか、そんなもん気にしたことねーから」
ちらりと裕斗を見ると、静かに俺の手元を見ている。
「…この手帳、俺ン家に忘れた事あってな、なんの気なしに見てたらな……」
俺は目的のページで動きを止める。
裕斗は、黙ったままそこを見ている。
俺は手帳を裕斗に渡して立ち上がった。
カーテンの隙間から下を覗く。
ずっと下の病院の入り口に平山さんの姿が見えた。
そして平山さんに向かい誰かが近づき、お互いに深々と頭を下げた。
「…それ、裕斗に向けて書いた詩じゃないのか?、…−−そのページ、一年以上も前、……惇は、俺よりも先に裕斗の事………
好きだったんじゃないのか……?」
一年前、5月最後のページ、メモの欄。
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