《MUMEI》

帰り、

あたしはバスの座席に座ってぼんやりてた。

教室で先生が教えてくれた詩の事を思い出して‥

周りを見回してみる。

3つ目のバス停で、

小柄なお婆ちゃんが乗って来た。

‥けど、

優先座席には中学生が陣取ってて──

外の座席も塞がってて、

お婆ちゃんは座れない。

エンジンがかかって、

バスが動き出す。

お婆ちゃんはポールに捕まったけど、

立ってるのは辛そうに見える。

「──ぁ‥あのっ」

「?」

「ここ、どうぞっ」

立ち上がって、そう言ったら。

「ありがとうねぇ、お嬢ちゃん」

お婆ちゃんは、

ニッコリ笑った。

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