《MUMEI》
あーあ、ついちゃった。
珠美は古い校舎を見上げた。
意を決してドアを開けると、ギ〜っと年季の入った音が響く。
そして中に入ってみると、あちこちに傷がつき、クモの巣が張っていた。
この校舎絶対なんかいるよ〜!!
珠美は既に半泣きである。
あちこちを見渡すと、階段をは発見した。
片足を階段の1段目に恐る恐るのせてみると、ギシギシと軋む。
そんな音を聞きながら階段を上っていくと、特殊なカードをスライドさせて開けるドアを見つけた。
ここかなぁ・・・っていうか、あれっ?
珠美はNIGHTSからの手紙が入った封筒を取り出し、口を下にしてブンブンと振った。
やっぱりない!!
そう、ドアを開けるための肝心なカードがないことに気がついたのだった。
珠美は途方に暮れ、そしてむくむくと怒りが込み上げてきた。
「こんなところでどうしろっていうのよ〜!!」
思いっきり叫ぶと、天井がピシッと鳴った。
「ちゃんと迎えにきてるよ〜?」
あれ?天井に声が跳ね返ってきちゃったのかな?
珠美は首をひねって考えた。
でも、こだまって自分が言ったことと同じことが返ってくるんだよね?
一般的にこだまとは山などで聞こえるものなのだが、そんなことはいとも簡単にスルーした。
こんな時でも珠美のピントのずれているのは健在である。
珠美はさらに唸って考える。
でも私はあんなこと言ってない。
ってことは・・・?
「イィヤァ〜〜〜〜!!!なんかいる〜〜〜!!!」
珠美はくるっと回れ右をして慌てて階段を下りようとすると、クスクスと笑い声が聞こえた。
「私ちゃんと足あるよ〜!?」
っていうか、かなり鈍いねぇ〜と、柱の影からひょこっと人影が現れた。
うぅ?
珠美は不思議な声をあげながら、声のする方に顔を向けた。
すると、少々高校生としては身長が足りない、うさぎの人形を抱えた女の子が現れた。
「驚かせてゴメンね?
みんな待ってるから早くおいで〜♪」
女の子はニッコリと笑って、珠美をさっきの部屋の前に連れて行き、カードをスライドさせてドアを開けた。
「さぁ、どーぞ〜」
珠美を押し出し、部屋に通した。
―これが、私にとって忘れることの出来ない出会いだったんだ。
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