《MUMEI》 愛は会社を救う(36)「我々の興味は、人間ではなく人間"関係"。それだけよ」 私の正面に立ち止まり、無表情にこう言い放つ。 「あなたはいつも、個々の人間にこだわり過ぎる」 黒曜石のような光沢を湛えた瞳。その視線はずっと容赦なく私を貫いている。 「いいこと、これはフィールドワークなの。忘れないでね」 「フィールドワーク…」 その言葉をきっかけに、私の内部で混沌としていた苛立ちが、にわかに形を持ち始めた。 「会社は、人が一生の3分の1を過ごす大切な場所だ。人それぞれのバックグラウンドが真正面からぶつかり合う、真剣勝負の場所なんだ」 冷静さを保とうと試みながらも、無意識のうちに拳を握っている。 一瞬の葛藤… しかし気力を奮い立たせるように、私は力を込めて言葉を続けた。 「職場の人間関係に苦しんで、自ら命を絶つ者だっている。…キミが一番よく知っているはずだろう」 それは、Kの感情に訴える、最も重い事実のはずだった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |