《MUMEI》
愛は会社を救う(37)
だが今、彼女の瞳の奥には、僅かな動揺の欠片すら見出すことができない。
「あなたの主観的な意見には、全く興味が無いわ」
私は自らの無力さに打ちひしがれる。もう自嘲する以外に術は無かった。
「それとも」
今度は、わざと卑屈な笑みを浮かべてKに顔を近付ける。
「私のやり方が気に食わないのは、初めての男に対するキミの嫉妬か?」
それでもKは冷め切った目のまま、男の浅ましい言動を冷酷に黙殺した。
そしてやにわに、すっと身を遠ざける。
「いいわね。今回は上品なやり方で進めてちょうだい。有効なサンプルとして、オーナーにリポートできるように」
ストレートの長い髪を翻すと、Kは再び黒いシルエットとなって路地へと溶け込んで行った。

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