《MUMEI》

はじめは気にもとめない小さな疑念だった。



萩原はいつも、加奈子と肌を合わせるときには、部屋中全ての灯りを消してから衣服を脱ぎ、真っ暗闇のなかで事に及んでいた。



愛する男性と四六時中一緒に居たいという女心を知らぬ歳でもないのに、萩原は加奈子と入浴を共にすることも堅くなに拒み続けた。



『萩原さん……どうして私に肌を見せないの…?』



『ん?…大好きな加奈ちゃんに見せたくない、醜い傷があるからさ…。』



そんな優しげな言い訳も、長く続けば不安へと変わってゆく。



その不安は、加奈子を再び闇の中へと引きずり込んでいった…。



『何故…………?』



その理由を知った時、束の間の幸せは音を立てて崩れていった…。

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