《MUMEI》

「さっきやられかけてたのは誰だ?」
ユウゴが言うと、ケンイチはわずかに目を細めた。
「あれは油断してたせいだ」
「油断なんてしているようじゃ、お前もたいしたことないな」
「……なあ、織田。やっぱ、こいつ殺しちゃっていい? 俺、こいつ嫌い」
ケンイチは視線をユウゴに向けたまま、感情のこもらない声で言った。
すると織田は薄く笑みを浮かべると「まあ、待て」とケンイチの肩を叩く。
「こいつだって今の状況はわかってるさ。なあ?」
織田はユウゴに笑みを向ける。
ユウゴは二人の顔を交互に見ながら考えた。
たしかに、これからプロジェクト関係者を狙うには一人では難しい。
協力者は必要だ。
しかし、この二人を信用してもいいのだろうか。
しばらく考えて、ユウゴは息を吐くように笑った。
この二人を信用などする必要はない。
利用してやればいいのだ。
自分の目的を達成するまで利用する。
途中、邪魔になるようならば殺してしまえばいい。
ユウゴは心の中で頷き、口を開いた。
「わかった。協力してやる」
すると、織田は当然のように頷いてケンイチを見た。
「そういうことだ、ケンイチ」
「……わかったよ。でも、俺はお前が嫌いだからな!」
不満そうな表情をしたケンイチは、ビッと指をユウゴに突き付けた。

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