《MUMEI》

「べーつに、何でもない」

「本当か?」

「ほ ん と です」

「どうした? 何か機嫌悪いなぁ」

「悪くない」

そっぽを向いたあたしに、

先生は苦笑して、

プリンを掻き込むと──

ポケットから、

何かを取り出した。

「佐原」

「‥?」

「ほら」

そう言って、

先生が投げて寄越した物。

「アメ?」

「メロン味」

得意げに言って、

先生は立ち上がる。

確かにあたし、

メロン味好きだけど──‥

何で先生が知ってんのかな‥。

あたし、

言った覚えはないんだけど──‥。

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