《MUMEI》
愛は会社を救う(38)
新しい週末を迎える頃、雑件ファイルの整理はほぼ完了していた。
これにインデックスを付ければ、簡易な文書データベースが作れるはずだ。
作業机に向かってそんなことを考えていると、静かに資料室のドアが開いた。
振り返ると、意外な人物が、おどけた調子で首だけ出している。
「仲原リーダー」
私はすぐに立ち上がり、ドアの方へ機敏に身を返した。年長者に対する時には、こうすることが身に付いてしまっている。
仲原は満足げな笑顔を見せると、肩でドアを押して中に入って来た。両手には、紙コップのコーヒーを持っている。
「3時だろ。たまには"高い方の"コーヒーでも飲もうかと思ってさ」
「これは、ありがとうございます」
うんうんといった風に頷きながら、紙コップを2つとも作業机の上に置いた。少し熱かったようだ。
そしておもむろに部屋の中を見回すと、今度は驚いた様子で目を白黒させ始めた。

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