《MUMEI》 今、 あたしのポケットには、 先生からもらったアメが1つ。 教科書を読む番が回ってくるまで、 あたしは先生の目を盗んでは── ブレザーのポケットに手を入れて、 アメを手の中で転がしてた。 いつもなら、 すぐ封を切って口にいれるんだけど。 先生がくれた物だ、 って思うと‥ 勿体なくて食べれない。 「──佐原、次の所から」 「───────」 「佐原ー、聞こえるかー?」 「ぇ‥、はいっ聞こえてます‥」 立ち上がりながら、 ポケットに突っ込んでた手を出して教科書を持ち上げた。 前へ |次へ |
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