《MUMEI》 愛は会社を救う(39)「あれっ!どこいっちゃったのよ」 両手で山の形をジェスチャーしながら、くるっくるっと首を動かして部屋中を探し回っている。 「山よ、山。ファイルの山!」 「それは、このようになりました」 私はキャビネットのキーを開け、整然と並ぶ数冊の真新しいチューブファイルを披露した。 仲原が目をしばたかせながら、舐めるように私の顔を見回す。 「おたく、ここ来てまだ一週間だよね。適当に捨てちゃったんじゃないんだろうね」 「ご安心ください。不要なものは捨てましたが、重要なものはきちんと整理しました」 私は試しに、営業グループ関係のファイルを仲原に手渡し、反応を窺った。 パラパラと目を通すうち、それまで砕けた調子だった仲原の表情が一変していく。眉間に寄った深い皺が、受けた衝撃の大きさを物語っていた。 前へ |次へ |
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