《MUMEI》
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背後に素早く近付いて、手首を捩り、ライターを奪い、引っぺがす。

静かになった所を足元にあったロープで縛っておく。
「……たまたま、見えて、その……コレ。」
俺の上着を差し出す。
流石にオイル塗れで外に出られないだろう。

斎藤アラタは俺を一瞥して上着を受け取らずに出口へ向かった。

迎えを待っているようだ。新しい包帯を鞄から出した。静かに巻き直す。
新しい手袋もあるようだ。手袋は脱ぎ棄てた。ポイ捨ては道徳的にどうだろう。
手首に痕。
白い手首に数本、薄紅の線が走っている。

鋭利な傷痕だ。
それより上に新しい紅が滲んでいた。縛られていたときのものだろう。光る舌先が近付く。

「危ない!
……その、有毒だから。」
オイル塗れの手首をアラタから離す、我に返り、後半の言葉は口篭る。


しまった、それを言うなら有害だ。

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